2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

批評の轆轤

“河井は焼物の名人である。だが更に尚「受取方」の名人である。人間に会う場合でも、映画を見る場合でも、品物を眺める場合でも、その価値の受取方が竝々ではない。他の人には無とも思えるものから、有を引出してくる。実際無であるとしても、有で受取る。否…

あたたかい信

“上人嘗て禅門の大徳法燈国師に会う。国師一問を上人に呈し、「念起即覚」の意を問われた。上人は一首の和歌を読んで答えられた。 「称うれば 仏も吾も なかりけり 南無阿弥陀仏の 声ばかりして」 国師は「未徹在」と云われた。未だ悟りに徹しないものがある…

なんとか喫茶店にもぐりこんだはいいが、隣のお客が壮絶にやかましい。しかも滑舌がやたらハキハキしているから、妙に言葉が入り込んできて、耳の入り口で追い払えない。珈琲代損したなあ。 やっと居なくなったが、急に静まりかえったら耳がきーんとする感じ…

繋驢橛

小田垣雅也がしばしば用いるたとえ話に、禅に由来する繋驢橛(けろけつ)というものがある。驢馬が杭に繋がれている。自由になろうとして、杭のまわりをぐるぐる巡る。すると、縄が杭に巻きついていって、どんどん驢馬は杭と近くなり、最後には身動きが取れ…

猫を鼠と名指す

アニメ『NOIR』の第6話「迷い猫」を観ていた。霧香とミレイユはナザロフという老人の暗殺依頼を受ける。身一つで暮らす、善良な、ひたすら隣人に尽くす老人。しかしナザロフはかつてKGBで、強制収容所において少数民族の虐殺を指示した過去を持っていた。そ…

『悩む力』と『続・悩む力』とのあいだの溝

姜尚中著、『悩む力』、集英社、2008を読了。先に『続・悩む力』を読んでしまっていたせいか、やや印象が弱い。うんと悩みぬくことに意味があるんだとは書いてあるが、もはや悩めないほどに挫折、絶望したらどうなるのかという弱さの問題にはふれられていな…

健康Ⅱ

胃癌検診結果を医師から聞く。たくさんのレントゲン写真を見ながら、丁寧に説明してもらう。小さなポリープが二つ三つあるが、良性なので経過を見ればよいとのこと。これが大腸だと、良性でも一応切除するのだそうだ。40歳も過ぎたし、健康管理には気をつけ…

健康Ⅰ

午前中、目玉が飛び出しそうな感じの頭痛に悩んでいたが、あまりに憂鬱なので、夕刻になってようやく、だいぶ前に処方してもらった頭痛薬を服用したら、すっと治った。有難かったが、そんなんやったら午前中に服用しときゃよかったと、くやしかった。水曜日…

もったいぶらない

“師、「併し、神が貴方を地獄に投げる事を欲したら貴方はどうなさいますか」。乞食、「神が私を地獄に投げるとおっしゃるのですか。若しも神がそうしたら、私は二つの手で神に抱きつきます。一つは謙遜の手をもって神の聖なる人性を抱き、一つは愛の手を以て…

大河ドラマって、分厚い本を読むような忍耐力が要る。あまり興味の湧かない場面もあるが、頑張って頁を読み進めてゆくと、思わず面白い箇所に遭遇もする。「こりゃ読めんわ」と思ったら、もう最初から観る気がしない。

凡人の板挟み

録画しておいた『平清盛』を観た。最近憂鬱だったのだが、久しぶりに納得できる回。ふと『平家物語』の重盛の台詞を思い出した。“親父入道相国の体をみるに、悪逆無道にして、ややもすれば君をなやまし奉る。重盛長子として、頻りに諫をいたすといへども、身…

無限後退とみえて、そうでもない。

午前中は、CCR、ブルー・チアー、カイツを大音量で聴いて過ごした。教会には、まだ誰も来ていない。 “脱構築論的神学が言うように、いかにも神は人間にとって「他なるもの」であり、「差異性」の相のもとにある。神についてのいかなる人間の表現も相対的であ…

教会にポジティフ・オルガンというのがある。パイプオルガンの小さいやつ。今日、空気が乾燥していたために、空鳴りがしたという。音が鳴らない、鳴りにくい音階があったという意味だろうか*1。今後は奏楽前には十分な湿度が保たれるよう気をつけねばならな…

あがき

教会で、やたらと「それは人間的な思いに過ぎないですよ」と言わないようにしたい。それこそ、溝を上空から見渡して、ここまでは人間の思いだが、この溝から向こうは神の御心だなどと、わたしに言えるのか。「これは神の御心です」という「わたしの」思いで…

証明と証しとのあいだ

“人間が棲んでいるところは、裂け目のこちら側であって、裂け目の上空ではない。見渡せるようなものは裂け目ではないのである。だから裂け目が一本の溝のように前方に存在し、解釈はそこまでは行けるがその向こう側はだめだといったような、対象的なものとし…

問うという確信

“しかしそれと同時に、このようなポスト構造主義の言葉理解が、ひそかに宗教的相貌を帯びていることに気づいている読者も多いのではなかろうか。ハイデッガーはもとより、禅の絶対無、道家の思想の「道」のありかたは差延と表現できようし、また神がイスラエ…

音について

昨日の展覧会場で手に入れた湯浅譲二のCDを聴いている。ウルトラマンシリーズを手がけた松本好正によるレコーディング。なんとも60年代SFな音。大阪万博のせんい館内で流されていたという。 アニメ『NOIR』を観直してみると、やっぱり銃声がすごい。当時のア…

喧嘩してでも、まあ。

“だから、あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい。”(マタイ5:48) あなたも完全な者になりなさい、ではなくて、あなた「がた」も完全な者になりなさい。一人では完全にはなれない。ここでの完全(テレイオス)は、「…