前夜式

 神学生時代、わたしにレコードを下さったご婦人が、天に旅立った。やっと先に待っている息子さんに会えたと思う。
 前夜式はルカ7:11−16による牧師の説教。25年前に山で遭難した彼女の息子のことを語る。
 ふと、連れ合いの叔父の葬儀を思い起こす。同じ説教箇所だった。連れ合いの母親と叔父という姉弟が連続して亡くなり、連れ合いの祖母、すなわち姉弟の母だけが残されたなかでの説教であり、牧師は声を詰まらせていたものだった。
 今日の牧師は淡々と語ったが、実に慰めに満ちた語りだった。「もう泣かなくともよい」、それは「泣いてはいけない」とは違うのだという語り。母は息子や先に召された家族と、ついに再会しただろうと。
 棺を覗き込んで、「息子さんのレコード大切にしますからね」と別れた。