読書メモ 『汚穢と禁忌』続き

 メアリ・ダグラス著、塚本利明訳、『汚穢と禁忌』、筑摩書房、2008.読了。著者は聖なるものと汚れたものとを安易に弁証法的に混同させず、フィールドワークで見られる両者の緊張や断絶を認める。その上で、しかも人間の分類としての「清さ」の限界に位置する汚穢が積極的に評価される契機が、世界の諸儀礼において見られることを洞察。文化人類学に収まらないゆたかさがある好著。
 聖性としての十字架の穢れと死やパウロカーニヴァルカーニヴァルという語は使われていないが)にも言及がなされる。キリスト教徒であるわたしとしては、自分の理解できない同じ信仰者たちに「汚らわしい」とのレッテルを貼っていないかという、きわめて厳しい問いともなっている。
 
 探究心とはまた別に、理解不可能なものを、理解不可能なままで置いておく生き方。それが汚らわしい存在か否かは、きわめて社会的、相対的文脈で決定されるということ。