ハングリーなまねび

 教育テレビで『ハートをつなごう』という番組を見ていた。36歳で派遣切りに遭った人、27歳で福祉関係に就職できた人が特集された。とくに前者の「30代半ばを過ぎて、なんの資格も持っていないので再就職が困難」旨、胸がつまった。石田衣良が「わかる、わかるよ」的レスポンスをしていたが、成功者が挫折者を慰める限界を、かえって見せ付けられた。自分ももしも復職できたら、この限界をよく自覚しておこうと思う。もっとも、復職できればの話だが。
 友人がRADIXというラテン語を教えてくれた。ラディカルの語源らしい。しかもその意味には通常わたしたちがイメージする「ラディカル」と、英語で言うroot、つまり根っこ、根源という意味とがあるらしい。否むしろ根っこが先で、ラディカルが派生か。同時かもしれないが。
 大胆不敵に新境地に挑んでゆくためにも、古典的保守的と思われるような基礎へのこだわりは捨てられない。というよりも、頑迷固陋なほどに古典的保守的なるものに敬意を抱き、まねび学ぶからこそ、そこから予想もしない大胆な「受け取り直し」が行われるのだ。ダリは言った。「古典を学ばない人。愚直に生きなさい。」。
 学ぶのを止めてしまいたい気持ちにとらわれる。学んでどうなるというのかと無力感におそわれる。だからこそ、今回知ったRADIXを心に刻み込め。学ぶことを止めるな。まねべ。模倣するのだ。パンクなほどに猿真似してやれ。