グラデーションを生きる

 先日ロフトに寄った折、入浴剤コーナーを熱心に物色する「おじさん」を見た。黒いジャンパーに普通のスラックスの「おじさん」。しかし黒いジャンパーの裏地が美しい紫だった。気になって「おじさん」の顔を見ると、マスカラをつけ、薄化粧していた。
 別に容姿が飛びぬけて美しいわけでもない。ぱっと見、ふつうに「おじさん」だ。しかしその物腰、落ち着きゆったりした、デヴィッド・スーシェにも通じる空気。なんだろう、とても美しく見えたのだ。そのおばさんは。
 性のグラデーションについて様々な理論もあり、ジェンダーとセックスの問題についても議論は深まっている。だが何より大事なのは、そのジェンダーやセックスを現実に生きている人との出会いなのだ。理論を理解できなくても、その理論を現実に生きている人と出会えば理解どころか同意できる。