貫禄
土砂降りを予想して支給品の真っ黒な合羽着用、ゴム長靴。そして晴天…絞られたなあ。
この道50年の職員と、ついに出発時、車庫へのエレベーターで一緒になった。気さくに見える人なのでたぶん話しかけてくるだろうと思っていたら、案の定。
「暑い時や凍えそうな時や、なかなかおもしろい仕事やろ?」
その一言に、プライドとか誇りとかいうような押しつけがましいものを超えた洒脱を感じる。
「50年働いておられるんですよね」
「正確には52年ですね。今年で終わりやな。70歳。3回目の定年や。」
たぶん正規で一度定年を迎え、延長して働いて定年を迎え、さらに非常勤で今回定年を迎えるのだろう。
血色のよい、日に焼けた肌。顔に刻まれた皺。ヘルメットを脱いだ時の禿げた頭に張り付く髪も、むしろ渋い。こんなふうに年を重ねられたらどんなにいいだろうかと思わせる。