モード変われどスタイル変わらず

 やっと水曜日か。朝家を出たら、クマゼミが道を横切って、這っていた。死に場所へと、ゆっくり歩いていた。
 身体がきつい。なんかはっきりした目標があれば、もうちょっと耐えられるんやけど…とにかく日曜日の週休まで。
 何件断られたかな。やっと売れた!商品を売るというのは、ほんとに大変なんだな。
 鷲田清一『感覚の幽い風景』(中央公論社)を読了。谷川渥『鏡と皮膚』を思い出させる、濃厚で幻想的なテクストであった。しかし学生時代に初めて鷲田の『ひとはなぜ服を着るのか』を読んだときほどのインパクトを感じないのは、自分がそれだけ老けたということだろう。
 『ひとはなぜ』を読んで間もなかったころ、彼の講演が近所の学校で開かれると聞いて、夢中で聴きに行ったものだ。ちなみにその情報は母がポスターから教えてくれたため、母と一緒に行ったのだった。鷲田の講演は一般向けであったが、内容は後の『感覚の』に通じる、変わらない彼のスタイルだった。母もとても興奮していたのを今でも覚えている。もう10年近く前のことだ。