こどものころ

 家々のあいだを小刻みに走っていると、ランドセルに野球帽の、でも大人しそうな少年が走ってついてくる。バイクを降りてマンションへ走り、戻ってくると、少年がメーターを覗き込んでいる。わたしに気付いてあわてて、小さな声で「こんにちは」
 わたしも「こんにちは。バイクはおもしろいで。大人になったら乗り。じゃあな!」と走り去る。
 走り去りながら、自分が小学生の頃を思い出す。家の中で、郵便を待っている。郵便が突っ込まれたときに、郵便屋さんの手を握る。「ふふ」という笑い声が外から聞こえて手が引っ込み、バイクの音が遠ざかって行ったこと。