記憶と現在

 “在ることは空間や時間を傷つけることだ/そして痛みがむしろ私を責める/私が去ると私の健康が戻ってくるだろう”(谷川俊太郎『六十二のソネット』より)生きている現実と切り離せぬ肉体、しかも生きている現実そのものとイコールではない肉体。詩人は見事に表す。
 久しぶりに実家へ。父母に「牧師に戻ったら」という話をしようとして、牧師とはどんな仕事であったか思い出せないでいる自分がいた。今のアルバイトの緊張や印象が強過ぎて、まるで昔から郵便配達人をやっているかのような錯覚から抜け出せない。