西欧をとおして純和風

 和辻哲郎の『倫理学(一)』岩波文庫版を読み終えた。面白かった。以前に九鬼周造の『いきの構造』を読んだときにも感じたことだが、西欧の哲学によって日本の、自分たちの文脈を際立たせるこの見事なテクスト!戦前にこれほどに世界を、そして自分の立つ場所を理解していた思想があったとは。
 それだけに、これほどの思想がある一方で、日本があの戦争の罪を犯したこともまた際立ってくる。ちょうどハイデガーらがいたドイツのように。倫理を豊かに知るということと歴史を倫理的に築くということとは整合しないのだろうか。わたしが聖書から神の言葉を聴くことと、わたしの罪深い行いとの不整合。
 まだ(二)〜(四)もあるから、読まないと。そういえば『正法眼蔵』も『万葉集』も途中で止まってたな。
 和辻哲郎の経歴や、耽美的なものへの憧れ、しかし文学には生ききれないところなど、なんだか小林秀雄を思い出させる。