マン・レイ展へ

 午後3時前に思いつき、駆け足でマン・レイ展へ。雨だし慣れない道程だしで、国立国際美術館に辿りついたときには足元もびしょ濡れだった。4時少し前に着いたため、館内も早歩き、ないし駆け足気味の鑑賞。
 写真とリトグラフが多いことに、時代の変化の過程を感じさせる。マルセル・デュシャンが彫刻展に便器を横たえただけの作品を出展し、大論争を巻き起こした20世紀前半期。芸術とは作者の手の業を感じ取れるものだという常識が覆されていった時代。今でこそCDやDVD、それにwebで芸術は表現もされるし鑑賞も可能だが、当時にあって複製可能な、というより複製されゆくことを前提とした芸術の存在は、人々を興奮させたことだろう。
 コピーとコピーとのあいだに生じる差異をさまざまな手法で強調することで、マン・レイは新しい道を拓いたように思う。ウォーホルを連想する。
 しかし一方でマン・レイは写真作品よりも絵画で評価されたがっていたという。彼自身には「オリジナル(手の業)」イメージとの葛藤があったのだろう。今残された作品群が決して易々と増殖していったのではないことを窺がわせる逸話である。