氷河

 神学生時代を過ごした教会で説教奉仕をさせていただく。何年ぶりかで再会した方も。懐かしいやらくすぐったいやら。
 講壇が改装されていた。もともと新築の会堂だったが、あらためて会堂は会衆による生ものであることに気付かされる。
 若くしてヒマラヤで遭難した息子の、遺品であるレコードたちを譲ってくれた女性。肺炎で危篤だという。もうすぐ息子や、先に逝ったご主人とも会えるのだろう。
 そうだ。そのレコードを聴こうか。わたしのコレクションの基礎をなしてくれた、大切なレコードたちを。氷河に眠る彼とともに。