青少年健全育成条例改正案

 かつて「エロ漫画」と呼ばれつつもふつうにコミック棚で売られていた漫画が、十数年前から「成年コミック」と黄色いマークがつくようになった。山本直樹らが強く反発したのを覚えている。今回も「犯罪抑止」という強気の議論が、多くの人々を納得させようとしている。
 バーン&ボーニー・ブロー著、香川檀ほか訳、『売春の社会史 下』、筑摩書房、1996.を読んでいる。下巻では18世紀〜20世紀の売春事情が詳しく報告される。政府が売春を必要悪として公認しつつ、規制もしようとする。そこには「病気を防ぐ」「犯罪抑止」の目的がある。しかし読んでいる限り、それらの政府の試みが成功したためしはない。売春以外の根本要因から病気も犯罪も生じることを、歴史上諸政府は発見できなかった。
 そういう歴史を顧みるに、成年指定コミックとするに足りず条例を設けて規制強化を図る東京都の試みが成功するとは思えない。とりあえず漫画を規制すれば犯罪が減る・・・・・あまりにも19世紀以前の発想のようにも思われる。