恣意的なようで、そうでもない

 “貧しく暮らすすべも、豊かに暮らすすべも知っています。満腹していても、空腹であっても、物が有り余っていても不足していても、いついかなる場合にも対処する秘訣を授かっています。”フィリピ4:12 パウロはこの秘訣を“習い覚えた”と前節で言う。簡単に習い覚えたわけではなかろう。
 和辻哲郎倫理学(一)』、岩波文庫の「序論」を読む。ハイデガーの『ヒューマニズムについて』が徹底的に解釈学的でありつつも個人の深みへと没入してゆく感があるのに対して、和辻の倫理学レヴィナス的な要素、すなわち他とのふれ合い、共同性につねに眼差しを向けているようである。
 それにしても、いつも疲れているので、ほんのちょっと読んだだけで眠くなる。面白いのに残念!
 なんとなくNHKをつけたら、日野原重明氏の特集をやっていた。非常に不謹慎なことだが、この方はお連れ合いが天に召されれば、ほどなく後をついてゆかれるのではないか、などと想像した。被災地で彼が「被災」と言わずに「受難」と言ったことに、彼の被災者ひとりひとりへの共感が感じられた。