専攻

倫理学(四)』も、ようやく半分くらいは読んだだろう。あとちょっとで、全四巻を読み終わる。それにしても和辻哲郎の、どこまでが学術的な研究の成果で、どこからが彼の空想なのかが分からない、あの独特の自由な文体は、松岡正剛を連想させる。広大な知識と、それを結び付ける飛躍と。
荒俣宏もそうなんだろうけど、博物学という、現行の学問からすれば遺物のような、死語のようなものは、文学の世界にいきいきと棲みついている。和辻哲郎を読んでいると、哲学者としてもちろん優れているが、むしろ博物学者のような趣きがある。
このあいだだいぶ先輩にあたるような同業者と話していて、「あなたの専門分野は何ですか」と問われて、即答できなかった。学生時代なら「キルケゴールです」とか「宗教哲学です」とはっきり答えられただろう。自分の中に確かな筋はあるはずだが、それを一言で表すのが、今は難しい。