「八王子」なんて言葉も、ここ出身か。

坂本幸男、岩本裕訳注『法華経(上)』(岩波文庫)を読み始める。あまりに難解なので、「序品」だけはまず通読し、そこで中断して巻末の注や解説を読んでみた。校訂のプロセスは『般若心経』同様に複雑で、聖書学と共通している。たくさんの写本の異動を比較し、文法の差異から成立年代を推測する。
「序品」を読んでいて、そのきらびやかな描写にヨハネの黙示録のような印象を受けていたが、どうやら法華経もその形成初期にあっては仏教のなかでもかなりエキセントリックな集団のもの、あるいは非常に際立った状況下にあったらしい。
巻末の註釈が、坂本、岩本それぞれに書いてあるのも面白い。二人の仏教学的な立場が異なり、整合できなかったからだと、岩本自らの後書きに書いてある。それだけ解釈の幅が豊富で奥深いことが察せられる。聖書学と同じだ。無理やり一つにまとめなかった岩波書店にも感謝。