1926年版『ベン・ハー』を観た。雑誌『ミニストリー』についていたおまけ。サイレント映画。後づけのピアノ伴奏がくどいので、ボリューム0にして鑑賞。信じられないレベルの高さ。2時間を超えるが、全く退屈でない。
しかしあの時代にあの映画が。当時の現実のドイツでは、まさに「ローマ軍」が、全く同じ鷲の紋章を掲げ、全く同様にユダヤ人たちを虐待し始めていた。劇中で、ベン・ハーとライバルのローマ軍人は、過去に親友であった。しかしかつての友は今や反ユダヤ…このような悲劇もまた、現実に起こっただろう。
コンセルト・ヘボウが1939年頃に『マタイ受難曲』や序曲『1812年』を演奏したのに通じる緊張感、悲壮感を感じる。もちろんまだ1926年ではあるし、エンターテイメントとしてのハリウッド映画だったんだから、製作者たちはまったく気にしていなかったのかもしれないが。
関係ないが、マリヤ役の女性が気が遠くなるほどきれいで、イエス生誕場面の微妙に色がぶれて滲んだ映像は、まるでエル・グレコの宗教画のようだった。
ベン・ハー結末で、イエスは復活せず、「彼は私たちの心の中で生きている」という、お葬式の追悼文みたいな台詞で終わったのが、いかにも当時の神学を思わせる。