お薬師さんを動かす

NHK『奈良 “祈り”を撮る』を観た。薬師寺で修業する20代の若い僧が、「お薬師さんをわずかでも動かしたい」と、声張り上げて読経する姿に感動。
人間の現実に対して微動だにしないかに見える薬師如来への「なぜですか!」という怒り、叫びを、祈りにおいてぶつける。昨日『司祭』という映画で、グレッグ神父は十字架に怒り、涙を流していた。「なんとかしてください!」。
若い僧は、「苦しんでいる人たちを、なんとかしてお薬師さんに救ってもらいたい」と真剣に語っていた。彼は見える形で被災地のボランティアをしているわけではないが、実際に被災地に向かう宗教者に等しい何かを捧げている。
聖なるものへの、不遜ぎりぎりの挑戦。怒りをぶつけること。怒りながらも離れず、しかも問い続け祈り続けること。宗教や宗教者が形骸化しない鍵が、ここにある。