現実迫る幻想

森茉莉の『甘い蜜の部屋』を読んでいて、モイラが百日咳で苦しんでいる場面が迫真的で、ちょっと気分が悪くなった。そして、やはり幻想や美というものは、こうしたとことん緻密で具体的な現実性の、丁寧な積み重ねによって成立するのだと実感。森茉莉の写実の見事さに胸打たれる思いである。