精緻とグルーヴ

休暇日なので、なんとなくぶらつくうちに、弥生美術館へ。田村セツコのコラージュ作品に惚れ込む。ここに少女が空間化されている。昭和の夢二もよいな。華宵の原画は宇和島でも松山でも見ることが出来なかっただけに、感慨もひとしおであった。喫茶店『港や』で夢二ブレンドを飲んで帰る。
老婦人たちが少女画報なんかを懐かしそうに眺めながら談笑する姿は、描かれた少女たちそのものではないか。少女とは年齢の謂ではない。一方で昭和一ケタ時代の和服とベレーに身を包む若い女性客もいる。ロマンはこうやって継承されるのだな。ほそぼそと、でもとぎれずに。
弥生美術館の、夢二美術館への渡り廊下に、水森亜土がクリアボードにマーカーやスプレーで即興描きした絵が無造作に飾ってあった。「お手を触れないで下さい」旨書いてはあるが、うっかり客の手が当たったりするのか、若干剥げていた。それくらい間近で観れた。感激である。子どもの頃、テレビで「あどちゃん」が下描きもせずに、歌を歌いながら一気にマーカーペンとスプレーで絵を描き上げてゆくのが、不思議でもあり、とてつもなく格好良く見えたものだ。真似して紙に思いつきで絵を描いても、絶対途中で「間違えて」捨てた。そんな憧れの絵の一つが展示してあった。筆運び(と言っていいのかな)の勢いがとにかく凄い。彼女の歌のグルーヴ感そのままである。