死を覚えることなしには

平家物語といえば、「耳なし芳一」だな。あれで平家とか源氏とか知ったんだと思う。子どもの頃に兄か姉かお婆ちゃんのお古かの怪談集が家にあって、読んだらトイレにひとりで入れないくせに(ひとり風呂に入っても戸を閉められなくなり、頭を洗うのに目をつぶるのさえ怖くなるくせに)、何度も読んだ。琵琶の音に涙する、蒼褪め透き通った幽霊たち!
耳なし芳一」とか「四谷怪談」のダイジェストをそうやって怖い絵つきで繰り返し読みながら、死の恐ろしさや不思議さについて、子どもながらに考え込むようになっていった。お盆はそういう不安と憧れとのクライマックスでもあった。その続きで宗教者の営みを続けていると言っても過言ではない。今の若い人たちは馬鹿にするかもしれないが、そういった怪談と、それらのテレビドラマ化、さらには心霊写真などのうさんくささと怖さと不思議さとのないまぜ・・・・きっかけはそういう、ささやかなことだった。