少女は表情を捨てる

“この世にいる限り、「赤ずきん」は狼たちに脅かされ続けることになる。窮地からいつも自力で脱出できるとは限らないし、助けてくれた狩人が次の瞬間に新たな狼にならないという保証もない。(略)『Dressed / Naked』における少女の無意識は、そのような抑圧に充ちたゲームへの参加を拒否して、狼も狩人も指一本触れることのできない世界へとその姿を消した。彼女は自分自身の完全な支配者となった。”(穂村弘『ぼくの宝物絵本』、白泉社、2010)
この一文だけでも、買った値打があった。といっても連れ合いが「きみがすきそう」と買ってきて呉れたのであるが。久世光彦が妄想する永遠の密室でまどろむ少女。森茉莉の甘い蜜の部屋・・・永遠の密室の系譜がここにも。矢川澄子宇野亜喜良による『おみまい』における「無表情な少女」への洞察も秀逸。
連れ合いは種村季弘穂村弘とを記憶違いしていたようなのだが、その偶然に感謝。