暗闇をしずかにみつめる

アーウィン・ブルーメンフェルドって写真家、こないだ日曜美術館のアートシーンで知ったけど、いいなあ。残念ながらもう観に行けないけれど。
ラーゲルクヴィスト著、尾崎義訳『バラバ』(岩波文庫)読了。最後までキリストを信じられず、最後に今度こそキリストに従ってローマに火をつけたら、それもまたキリストを裏切りカエサルの思惑に加担することに相成ったという、出来事レベルでは皮肉でしかない男の物語。
とはいえ、磔刑にされたバラバが、最後やけに平安に見える。キリストに従う/キリストを裏切る、という、始終彼についてまわった二元論を、その死に際してついに超克したかのようである。信じた行為が裏切りにもなるし、裏切りの連続の生が誰かを支えることもまたあると。しっくりくる終わり。
今のこの寂しさったらないな。早く引っ越し当日になってほしい。