神託と日常

 井筒俊彦訳、『コーラン(下)』、岩波書店、2001読了。やっとコーランを読み終えた。井筒の解説どおり、後になるにつれて一章が短くなり、表現が呪術的になっていた。つまり成立年代と章立てとが逆で、うしろのほうが初期の“お告げ”らしい。
 もちろん編集史的にはもっと複雑な層の重なりや混交があるらしいが、大雑把には後ろ→前へと時代が進み、内容は複雑な日常生活の指導へと変化する。多神教信仰への神の裁き、堕落した生活に対する神の呪いから、生活や戦争に関する宗教/政治的指導へ。マホメットの成長というか生涯のダイナミズム。