マテ!

今の自分は餌をちらつかされておあずけをくらっている犬みたいなもんだ、と拗ねかけて、いやまてよと考えなおす。犬はおあずけをくらっているとき、あるいは遠くの獲物めがけて疾走するとき、餌が口に入らないかもしれないとか、獲物に咬みつけないかもしれない、などとは思ってもみないはずだ。
疑う犬に対して「おあずけ」は成立しないし、最初から捕捉不可能な獲物をきっと犬は追いかけない。必ず口に入る、必ず追いつき咬みつくと確信しているのだ。そういう意味でのみ、わたしはおあずけをくらっている犬である。