相手を黙らせる

ところでアレクサンドリアのキュリロスを調べていて、ヒュパテイアという女性の哲学者を知った新プラトン主義で、数学や天文学も教えていたらしい。わたしが知らないだけで、女性の哲学者という存在も、まだこの時代には何人もいたのかもしれない。ところが、彼女はキリスト教徒迫害の汚名(それとも異端の汚名?)を着せられ、アレクサンドリアのキュリロスの配下の者たち(と思われる)に謀殺されたという。そしてこの事件が、歴史的にはキリスト教が異教を駆逐していった転換点として、象徴的に語られていると。
「女性」の「異」教の哲学者が、「男性」の「正統な」キリスト教徒たちに殺害された、と理解するのは、読み込み過ぎなのだろうか。人名事典やキリスト教事典では書かれていなかったが、ウィキペディアによれば、裸にした彼女を生きながら牡蠣の貝殻でその肉体を削ぎ取って殺すという、異常な、変態的な殺人の方法である。ヒュパティア - Wikipedia
しかも教会へと拉致して、教会の中でこのようなことをしている。ここでは教会はまぎれもなく「男性の」教会なのであろう。このようなことができた時点で、キリスト教が異教を駆逐したという転換点であるとともに、男性が女性を、教会内および社会において、完全に沈黙させた転換点でもあったのではないか。