まだ温かい

日曜美術館』の「アートシーン」のなかで、後鳥羽天皇宸翰御手印置文という、後鳥羽天皇が流刑後、死の10日程前に寵臣へ遺したという文書が紹介されていた*1。文字の背後に、両の手のひらを朱で押した手形が鮮やかに開いている。左手は薄かったのか、修正したような跡が見えるが、右手は手相や指紋もくっきり。
流麗な本文はいかにも古文書なのだが、手形は昨日押されたように肉々しく、書き手のからだの熱さが異様に迫ってくる。時代も隔たり、殆ど百人一首の挿絵のようなイメージしか浮かばないはずの中世人が、わたしたちの同じような肉体をそこに晒しているのだ。なんとも驚きに満ちたテクストであった。