2012-01-01から1年間の記事一覧

クリームが崩れないよう慎重に冷凍保存しておいたいちごのショートケーキを、電子レンジで解凍。誤ってほかほかに。湯気が出てクリームは溶解。残念な気持ちでスプーンでケーキをすくうと、染み出たいちごの汁があたたかいクリームと混じり合い、意外にもお…

F・G・イミンク著・加藤常昭訳『信仰論 実践神学再構築試論』を読み始めた。おそらくオランダの改革派神学の伝統に忠実でありつつ、現代の(衰退しつつある)教会のありように応答しようとしていると思われる。今、第2章の途中まで読んでいるが、信仰の個人…

瞬間を切り取るのか、動きなのか

野矢茂樹『心と他者』(中公文庫版)を読んでいる。知覚と幻覚は何が違うのかを、一所懸命に考えさせるテクスト。あまり実利的にとらえるのはよくないと思いつつも、「役に立つなあ」と思ってしまう。というのも、まずは知覚も幻覚も等しくリアルな体験なの…

対話における「いなし」

剣道をやっていたとき、先生から「いなす」ことを教わった。相手の剣尖をいなす。体を大きくよけて避けるのでもなく、相手の剣を跳ね飛ばして自身の剣を突き出すのでもなく、相手の剣尖をするりと流す。相手はそのまま流れ去る。わたしが先生をいくら攻撃し…

書かれてはいないが、たいせつなこと

“すなわち、使徒と教父の伝統に基づいていると想定された慣行にしては、聖書にも古代の著作家の中にも、それを支持する書かれた証言がほとんどない、という事実である。(中略)聖画像の支持者たちは、自分たちは「率直な信仰と公同的教会の書かれざる伝統の…

ある方とファミレスでお喋りしていたら、アイフォンが聞いたことのない音でけたたましく鳴る。表示を見ると、「大きい揺れにご注意下さい」旨。緊張して身構えると、やがて大きな揺らぎ。ファミレスが二階にあったこともあり、気持ち悪い横揺れ。やや離れた…

帰着前日〜新幹線車中

小林秀雄と中原中也と長谷川泰子で、誰か映画作ってくれないかなあ。久世光彦が紹介した、映画化が見送られた脚本の存在が気になって仕方ない。久世の解釈では、小林は長谷川よりも中原を「愛して」いた。 赤木善光が学生時代、東神大に小林秀雄を講師として…

立ち読みして出会った物語たち

明日帰るので、時間を作って久し振りの友人と会い、帰りに実家最寄り駅前の小さな本屋へ。雑誌からマンガ、文庫までざっと置いてある、よくある書店。むかしはよくマンガやエロ本をここで買った。そして、この書店でドストエフスキーとも出会った。松岡正剛…

望外の

車椅子の母と、デイルームでおしゃべり。傷ついた命の回復しゆく姿に驚嘆。医療スタッフの方々の配慮に満ちた言動に、牧師として学ぶものあまりにも多し。人びとに、そしてイエスさまに深く感謝。 二人の人と、それぞれの場面で、二人きりで祈りあう場面があ…

祈られている喜び

母が2年前に洗礼を受け、通っている教会に出席。お世話になっている牧師や信徒の方々にご挨拶。思えば、当時母の「教会でお葬式をしてもらいたいけれど、突然頼んでできるのか」との質問に、ちょっとだけ嘘をついて、「うーん、むずかしいな。ふだんから通っ…

母の宇宙

食後に食器を洗い、引き続き掃除。掃除をしつつ、部屋の隅々まで精緻に整頓されているのが目に入り、また、テレビや音響機器の上にも埃がまったく積もっていないのを見るにつけ(わずかに積もった埃や落ちているごみはすべて母の入院後のもの)、母がどれだ…

谷間の鹿

今日も病院へ。母は水を「おいしい」とごくごく飲み、みかんを食べた。錠剤を口に入れてあげ、顔や手を拭いた。手術前同様、わたしの祈りに「アーメン」と力づよく応えてくれた。ここに命がある。神の息吹を乾いた砂のように吸い込んでゆく命が。

11時間

今日も長いぞ・・・・・ 母が手術室に入るとき、父とふたり、ぼーっと突っ立って見送ってしまった。握手のひとつでもすりゃよかったな。 長い一日。早く終われ。 もうすぐ6時か。あと何時間やろ。 夕食にビッグマックセットを買って控室へ。袋を開けると、ビ…

母の入院手続き、どうにか無事に終わる・・・あ、入院して大手術もするんだから、無事とは言わないな。 右半身麻痺の父を助けるべく、食事を作ったり洗濯をしたり。体調の悪いときの連れ合いを助けるスキルが、こんな場面で役に立とうとは。あまりうれしくは…

きのう新幹線のなかで考えたこと

悔しい。自分が無任所教師であることが、打ち震えるほど恥ずかしい。恥ずかしいと思ってしまう自分を、殺してやりたい。 お前らおぼえてろよと、マンガでもいまどき言わないようなせりふでうそぶき煮え繰り返り、ああそうか、だからイエスさまもあんなに苦労…

大胆な翻案でやってくれ

『素晴らしき哉、人生!』のジョージばりに「生まれてこなければよかった」と言ってみるテスト。もちろん2級天使は現れない静寂。 『カラマーゾフの兄弟』がテレビドラマ化されるという。楽しみだ。前任地を様々な事情でやめなければならなくなった頃、まず…

神の祝福の外に置かれる人

クリスチャンが、クリスチャンを、平気で切り捨てる。そして「これは御心ではなかった」と、実にあっさりと済ませる。そう、「神の」御心でなかった。人間であるわたしにはなにもできなかった。だから反省する必要も、良心を痛める必要もない。忘れよう。委…

ぽっと出

ずっとずっと昔に言われた一言が、こういうときにうずいてくる。結局は自分の劣等感に過ぎないのだが。 「あなたのような初代クリスチャンは熱心に信じて求めても、躓いたらすぐに教会を去ってしまう。でもわたしたちのような生まれたときからのクリスチャン…

そこにキリストがおられるからだ

自分が身を置いている教会では、ほんとうにお世話になりっぱなしで、どの方角にも足を向けて眠れないほどだ。だからほんとうは愚痴なんてこぼすべきじゃない。ただ、他の教会での、とある関わりで、けっこう悔しいと思うようなことがあった。やけくそに「教…

個性の神話の下で生き抜く

http://www.higan.net/navi/2012/11/post-1090.html 自力他力の単純な二項対立ではない。パウロなのかヤコブ(の手紙)なのかの単純な二項対立ではないのと通じるものがある。 日本民藝館監修、『柳宗悦コレクション 1 ひと』、筑摩書房、2010を読了。柳の…

置かれた場所で

地方の小さな教会で経験を積んだ自分が、突然東京の教会に会堂守として赴任して、何を勉強させてもらったか。いちばんのそれは、「電話応対」。前任地でももちろん電話はよくかかってきたが、たいていは信徒の方の諸用、ないし幼稚園関係だった。要するに良…

もしもわたしがいなかったら

昨日の地震は震度4だったらしい。久しぶりに恐ろしかった。料理で火を使っているときに連れ合いが「わぁ!」と叫び、すぐS波が。沸騰したスープが波打つのはほんと心臓に悪い。恐ろしい思いは、17年前のあれ一回で、もう十分なんだが。 教会の映画鑑賞会が、…

追記

この『素晴らしき哉、人生!』という映画、勧善懲悪でないところがいい。悪人ポッターが自業自得で自滅するかどうかとか、そんなのは物語の主眼の外にある。悪人がどんな悲惨な結末を迎えるのかではなく、人生の意味を問うほどに追い詰められた主人公が、問…

そこに人間がいる

録画しておいた日曜美術館の『GAMANの芸術 戦時下に刻まれた不屈の魂』を観た。戦時中、砂漠の強制収容所に送られた日系人たちが、追い詰められた状況下、ごく限られた素材で、きわめて優れた工芸品を遺した、その作品展の紹介。 柳宗悦はこうした作品…

味を伝えるのは神

キリスト教を、信じていない人に弁証する際、「信じてみないと分かりません」じゃ話にならない。教義や教理の歴史、典礼のありよう、社会とキリスト教の関係…いくらでも他宗教、無宗教の人と共有できる豊かさがある。 しかしまた一方で、それら難しいことは…

死を観る

吉村昭「少女架刑」(北村薫・宮部みゆき編『名短篇、ここにあり』所収)を読んだ。死の恐怖を具体的に語る際に「火葬されている自分を想像したりして怖い」というように話す人が時折いるが、まさにそのような「死後の、死体となった自分」を客観的に語る小…

ホモロゴス

ニコ生神学部おもしろかったなあ。キリスト教ネットメディア研究会 – 絶版キリスト教書 電子化事業 仏教の専門用語もあるし、キリスト教でもわたしの知らない専門的な議論もある。だからもちろん全部は分からなかった。でも面白かった。小田垣雅也が仏教との…

遠く近くに

教団の機関紙で読んだ、「伝道に熱くなる教団から伝道に燃える教団へ」というキャッチコピー。少年漫画のノリだなあ。神の御前に子どもらしい素直さで伝道に臨む、みたいなイメージなんだろうか。でもどうも、「燃える」というと一時的な熱さのイメージが。…

精緻とグルーヴ

休暇日なので、なんとなくぶらつくうちに、弥生美術館へ。田村セツコのコラージュ作品に惚れ込む。ここに少女が空間化されている。昭和の夢二もよいな。華宵の原画は宇和島でも松山でも見ることが出来なかっただけに、感慨もひとしおであった。喫茶店『港や…

ホンバでない理解

わたしは海外に出たことがないので、「やっぱり留学しないと神学にせよ西欧文化は分からないよ」と言われると辛い。「やっぱりキリスト教は信じないと分からないよ」と言われるときの上から見下ろされる感じも、似たようなものなのだろうか。とはいうものの…